Reportレポート

【審判員 in 国際大会】U19女子世界大会③ 参加後感想

8月1日〜10日にカナダ・ピーターボロで開催されたU19女子世界大会は10日間で81もの熱戦が繰り広げられ、アメリカの優勝で幕を閉じました。
今回は審判団から見た今大会の様子を報告させていただきます。

U19世界選手権大会にみる世界ラクロスの今

≪どんな国があるの?≫
世界から集まった22チームの中には、南米・ジャマイカやアフリカ・ケニアの参加もありました。
ケニアではラクロスはまだ始まったばかりのスポーツ。男女共チームはあるものの、防具や道具がなく本格的な練習は出来ていないそうです。大会が始まる前から有志の呼びかけがあり、ラクロス道具や審判道具、その他ノートやペンなどの寄付がたくさん集められていました。
また、ケニアのオフィシエイティングの統括をしているSumbaさんが審判の勉強のために来ており、審判のミーティングに参加したり、試合を観戦して勉強したりしていました。

ケニアのSumbaさん

アジアの審判界にも新しい動きがありました。香港から2名の審判員が初選出されました。
この2名は日本にも来たことがあり、日本のラクロスにとても興味を持ってくれていました。今後、日本と一緒にアジアを牽引していく一員になるでしょう。

同じ試合に派遣された香港のMak Noi Lee審判員(一番左)と大久保審判員(右から2番目)

大会レポート

≪大会前にテストが待っている!≫
私たちは、国内の選考を経てU19世界選手権大会に派遣されていますが、現地で審判をするために下記の2つのテストをパスする必要があります。

⑴ルールテスト
日本にいる時から、練習問題がインターネット上で受験できます。実際のテストはその中から50問出題され、40問以上正解で合格です。
内容は、ルールに関する知識を問われ、国際ルールブックから出題されます。
はい、そうです。英語です。だから、日本人の私たちは英語のテストを受験状態。引っ掛けがあったり、難しい単語で表現されたり、テストは選択式ですが、油断すると間違ってしまいます。

ルールテストがいつ行われるのか、現地に着いてから発表され、集合日翌日夜に受験。クーラーが効き過ぎのPCルームでは、凍えながらテストを受けました。
日頃の勉強の成果で、晴れて日本メンバーは皆合格しました!

⑵フィットネステスト
呼んで名の通り、体力テストです。試合中に審判として必要な体力があるかを確認します。
今大会からスプリント系を重視した3種目に刷新されました。種目は、簡単に言うと、40mダッシュ6本、20m反復横跳び2本、ペースがだんだん上がる長距離走。
テストはグループに分かれて実施。待っている人はテストをしている人に声援を送ります!私たちも声援にはとても励まされました。
測定機器のトラブルがあったり、スピーカーの配線が合わないとかで、何度かやり直しをする事もありましたが、皆、怪我もなく終了!

晴れて、私たちはカナダで審判をする権利を得ました!!

≪試合以外に何をしている?~part1~≫
不定期にて、審判員全体へクリニックが開催されます。(もちろん全編英語です)
大会が始まる前は、全員が一堂に会して。新ルールの確認が中心です。大会が始まったあとは、派遣された試合のスケジュールに関わらず、全審判員が参加できるように1日2回開催されました。内容は、ポジショニングの確認、ファールの基準の確認、リーダーシップやチームワークなど、試合中に受けたフィードバックを共有する場となります。日本で教わっている内容と同じなのですが、講師の説明もとても上手で、説明の仕方が違うだけで、理解度がまた上がりました。また、講師がトップダウンで教え込むのではなく、各審判員は必ず自分の意見を述べることが求められ、様々な意見が尊重される点も印象的でした。

≪いざ試合へ!≫
いよいよ8月1日(木)から大会が始まり、派遣されたオンフィールド審判員は、基本的には一日一試合の試合を担当します。日々の派遣はアサイナーからソフトウェアを通じて連絡されます。
大会開始の5日間は、試合毎に審判員のパフォーマンスを査定するアセッサーから自分の強みと改善点をフィードバックしていただける機会もあり、日々振り返りをしながら次の試合に向けて調整していきます。
世界中から集まった審判員たちと、世界中から集まったチームの試合を担当することは、ある審判員の言葉を借りると「なんとAmazingなこと!」で、本当に楽しく貴重な時間で、あっという間に大会10日間が過ぎていきました。

決勝の主審を担当した喜嶋志穂子審判員(右から二番目)

 

試合後にリラックスして写真撮影(左端: 宮崎彩審判員、左から二番目:阪本一美審判員)

 

試合中の大久保祐子審判員

≪試合以外に何をしている?~part2~≫
大会期間中、審判員は試合のほかにも、クリニックや食堂や宿舎での会話などで交流を深めていきます。審判員同士の交流促進企画として、自分の住んでいるところにゆかりのあるものを各自用意して交換する、ギフトエクスチェンジが催されました。
日本人審判員が仕切りによって開催され、全員が日本スタイル「ピース」で記念撮影。皆が笑顔になり楽しんでいただけて大成功でした!

ギフトエクスチェンジ全集合写真

 

カナダと日本のプレゼント交換(右:五東幸子審判員)

大会を終えて

<大久保 祐子審判員>
この大会に参加するにあたって、国内外の沢山の方から応援やご支援をいただきました。本当にありがとうございました。約7割の審判員が2年前の世界大会にも参加していたので、再会を喜ぶと同時に皆のレベルアップした姿を見て、「負けていられない」と毎日必死に過ごしていました。
ラクロス(審判)の活動を通じていつも感じるのは、単なる技術的な成長ではなく、人と人との交流を通して自分の価値観が広がり、知らない世界がどんどん見えてくるという事です。世界中の人と出会い、色々な経験を通して自分が成長させてもらえたことは何物にも代えがたい財産になっています。また2年後の再会を楽しみにしながら、九州地区で一緒に活動している審判と一緒に技術を磨いていきたいです。世界大会を目指している方、新しいチャレンジをしようと思っている方、是非一緒に頑張りましょう!

<阪本 一美審判員>
本大会期間中には、普段活動している東海地区の仲間から激励のビデオレターを送っていただいたりと、多くの皆さんの励まし、ありがとうございました。
学んだことをしっかり日本に持ち帰り、より日本のラクロスをより魅力的なものになるよう、引き続き努力してまいります。
また、将来世界で活躍する審判員になりたいと少しでも感じた方、是非迷わずはじめの一歩を踏み出しましょう。

<宮崎 彩審判員>
今回2回目の国際大会ということで、前回メンバーとの再会、一方では新しいメンバーとの出会い、両方を味わえました。
審判している人はいい人しかいない、そんなステキな人々とラクロスのことだけ考えて、現実から離れ2週間過ごせたのは、幸せなことでした。
心が折れそうになった時、普段活動している東海地区の仲間から激励のビデオレターで励まされ、大会参加の日本人同士で励まし合い、乗り切れたことも新たな自信となりました。
このように、学んだことは、地区内、国内へ私の言葉として伝えられていけたらと思っております。
ルールの進化、道具の進化、ラクロスはこれからもどんどん変わり続けて行くと思います。それを今自分の肌で感じれる機会が世界大会です。
是非、何か少しでも自分の触手が反応したら、是非チャレンジしましょう。
また、このような最高の機会を与えて下さった、協会、本部、地区の皆様にこの場を借りて、お礼申し上げます。

<喜嶋 志穂子審判員>
今大会も決勝戦の主審を務めました。個人としては三大会連続、日本人審判員としては五大会連続です。今回、私はWorld Lacrosseの派遣要請を受けて大会に臨みました。急遽大会に参加する戸惑いはありましたが、World Lacrosseの信頼に応えたい一心で活動しました。私の役割はOn Field / Off Field 両方を担うHybrid Officialでした。猛暑の中、一日二試合をこなすハードなスケジュールでした。
Off Field Officialとしては審判員のアセスメントを経験豊富な様々な国のメンバーと行いました。アセスメントのアプローチは個人個人で多様でしたが、興味深いことに核となる大切な部分は共通していました。ラクロスは空間の奪い合い。アタック・ディフェンスどちらが先にそのスペースを占有したか。それを如何に正しく捉えジャッジしていくか。それが世界共通と言える視点でした。
On Field OfficialとしてはPool Aの国々の審判員と組んでアメリカの試合を吹くことが多かったです。フィールドで感じたのは絶対女王アメリカのレベルの高さ。心・技・体・知。全てが各国を圧倒していました。同時に、アメリカ・カナダの審判員の層の厚さと各人が持っている確立されたレフェリング・ロジックに圧倒されました。「他人にどう思われるか」ではなく「自分がどう考えるか」。私が常日頃大切にしている「自分軸」の重要性を再認識しました。
「全て自分次第」。今大会、私は自分に負けそうになったとき、自分にいつもこの言葉を投げかけていました。2005年アメリカのメリーランド州で初めて見た世界大会の決勝戦。あの場に立ちたいと夢見て日本で活動してきました。2021年フル代表の世界大会はアメリカのメリーランド州で開催されます。私は再び決勝戦を目指します。そのチャレンジを日本の皆さんとできると嬉しいです。

<五東 幸子審判員>
私は、『ヘッドアセッサー/ヘッドメンター』として、『リーダーシップチーム』の一員としての参加でした。60名もの大所帯の審判団を6名のリーダーシップチームで統括しました。私以外の5名は欧米の国の人達。今回、World Lacrosseの審判委員長から、多様性の観点とWorld Lacroose の審判委員としての活動実績を鑑みて、是非リーダーシップチームに参加してほしいと声をかけて頂きました。リーダーシップチームの活動は全体の統括、朝の試合から夜遅くのミーティングまで活動は続き休む暇もなく、また他に参加している日本人審判員と会話する機会もほぼなく、2週間、英語で欧米文化の中で生活していました。何回も心が折れそうになりましたが、欧米文化に偏らない人材の「多様性」のため、非英語圏のみんなの代表として頑張るんだと何回も何回も自分に言い聞かせて、自分なりの意見をどうしたら通せるかを常に工夫し考え、自分の意見を発信し続けた2週間でした。
そんな2週間を送って帰国後、会社に出社し、朝の挨拶をしたとき、周りのノリのそっけなさに「しまった、ここは日本だった」と痛感し、その他いろいろカルチャーショックを感じました(でも1週間も経つとすっかり元の感覚です)。私は、海外の大会に参加すると、審判としての経験に加え、異文化の経験、それを通じての人間としての成長を感じることが出来るのがとても大好きです。日常生活・単なる旅行では得られないような経験がたくさん出来ますよ。みなさんのチャレンジ待っています。

Photo by 大久保 祐子、阪本 一美、宮崎 彩、喜嶋 志穂子、五東 幸子

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