Newsニュース
ラクロスコミュニティに関わる全ての皆さまへ
新型コロナウイルスにより、仕事や生活に大きな影響が出ている方もいらっしゃると思います。また近しい方が感染し、厳しい状況にあるという方もいらっしゃるかも知れません。
いち早く状況が収束し、皆さまが普段の生活を取り戻せるようになることを心より願っております。
さて、先日6月20日に開催された理事会において、JLAは3つの大きな決断をしました。
まず、新型コロナウイルスに対して、ゼロリスクを求めないこと。
続いて、ラクロスは、私たちが充実した人生を送るために必要なものであると信じること。
最後に、JLAは公式戦の開催に向けて全力で動き出すこと。
これらの決断を踏まえ、本日JLAより「2020年基本方針」及び「チーム活動再開ガイドライン」を公開させていただきました。また併せて、公式戦の企画・運営方針を連盟と各地区に向けて発表致しました。この先日本のラクロスは、経済活動を担う企業や、学びを提供する学校と同様、新型コロナウイルスのリスクと共存しながら活動を行うことになります。
会員の皆さま、特に今年が学生最後のシーズンになる4年生の皆さまは、今日まで長く不安な日々を過ごされていたことと思います。決断に至るまで時間がかかってしまったことをお詫び申し上げます。
今日は「開催に向けて動きます」という発表だけではなく、この決断に至った背景やJLAが目指すものについて説明させていただきます。非常に長くなりますが、是非読んで頂きたいと思います。
まず、新型コロナウイルスのリスクについてのJLAの現時点での考え方をお話いたします。
今も様々なメディアでウイルスの脅威についてのニュースが多数飛び交っている中で、私たちはその具体的なリスクを正しく把握することが大切だと考えています。
新型コロナウイルスにはまだまだ解明されていないところが多くあります。感染した場合も、感染経路が明らかにならないことがあります。確実に発症を防ぐ方法も、完全に治療する方法もまだ見つかっていません。そのことが、この脅威に対する不安を掻き立てる要因でもあります。
それでも、新型コロナウイルスの脅威について分かってきたことも幾つかあります(あくまで6月30日現時点での情報によります)。
・日本における新型コロナウイルスの重症化率は、欧米各国と比べて著しく低い。また、日本における死亡者数は、例えば自動車事故のそれよりも低い(ペンシルバニア大学准教授の上林拓先生 [医学博士MD、免疫学 Ph.D.] に助言いただきました)。
・いまだ予断は許さないが、非常事態宣言が解除されてから約1カ月が経ち1日あたり数百万人の通勤者を抱える東京都でも、爆発的な感染拡大及び死亡者数の増加は起きていない。
これらの事実は、この新しい脅威が日本社会において少なくとも途方もない大きさではなく、許容できる可能性があるということを示しています。私たちは、完全には実現することのできない「ゼロリスク」を求め続けるのではなく、他の様々なリスクと同じように、新型コロナウイルスのリスクを正しく恐れ、受け入れていく必要があります。そして、やる場合もやらない場合も、他の誰に委ねることなく、自らの意思で決断しなければなりません。
これが、今回の私たちの議論の始まりです。
次に「ラクロスは社会に必要なのか?」という命題について。
これは私たちのアイデンティティに対する問いかけでもあります。
私たちはこの問いかけに対して、明確な回答を持っています。
「ラクロスは社会に必要である」と。
ラクロスだけではなく全てのスポーツは、たとえ無くなっても私たちの命を奪いません。
しかし、このことはラクロスが社会に必要ない、ということを意味しません。
私たちが生活をする上で、QOL(Quality Of Life)=生活の質は非常に大切なものです。そして、私たちのQOLは、確実にラクロスを通じて向上してきました。
このラクロスというスポーツに情熱を傾けることを通じて、私たちはたくさんのものを得て成長し、社会に還元してきたはずです。
挑戦する機会の重要性、
多様性に対する理解と学び、
目に見えないものを信じる力、
他者と共感することの素晴らしさ、
自分自身と深く向き合う時間、
目標に向かって努力することの尊さ。
これらの全ては間違いなく、私たちが生きていく上で非常に大きな意味を持っています。
ここまでが、今回の私たちが決断するに至った経緯です。
続いて、今回の発表の要点と、そこに至った経緯を説明させて下さい。
【公式戦の開催について】
8月中は開催せず、各地区の状況に合わせて9月以降の順次開催を目指します。各地区における学生およびクラブの公式戦開催を優先する為に、全国大会(全日本選手権・大学選手権・クラブ選手権)は行いません。
本年の公式戦は『2020年特別大会』と位置づけ、各規約の緩和、運営の簡素化をはじめ、従来とは異なる対応を検討しています。ブロック編成やチーム毎の試合数等については、まずは例年に近いものを目指しますが、それが難しい場合には、しっかり順位が確定される形式を優先しながら、状況に応じて柔軟に変更を行います。
・現時点で8月中の開催を行わないと決定したのは、現時点で日本全国の多くのチームが全体練習を行っておらず、活動再開から公式戦開始までの期間を確保するためです。
・新型コロナウイルスの影響の地域差が大きいため、開催時期や大会内容詳細は地区ごとに決めていきます。
・公式戦参加チーム内に感染者(もしくはその可能性が高い人)が出た場合、チーム全体が濃厚接触者となり2週間程度の活動停止となりますが、その場合は不戦敗ではなく試合延期とします。これは、協会会員が症状を隠してしまうことを防ぐ目的もあります。
・本年の学生公式戦においては、チーム毎に活動再開時期が大きく異なること、また、やむを得ない事情で参加が不可能となるチームも考えられることから、「昇格」「降格」は原則行いません(クラブチームにおける入替戦は、現時点ではまだ開催しないという決定は行いません)。
・リスクを考慮した上で、公式戦への参加を希望しないチームもあると思います。所属大学の許可が出ない学生チームもあると思います。それらのチームについては、チームの不利益とならないよう今年限りの柔軟な対応をしていきます。また、チームの人数が足りないケースなど、今年特有の様々な問題についても柔軟な対応を行っていきます。
・各チームにおいて、個人として参加を希望しない会員もいると思います。それらの会員に対しては、公式戦への参加を強要しないようお願いいたします。
・同様に、審判やボランティアスタッフの中にも、活動への参加に不安を感じる方もいると思います。その方たちの意向を十分に汲みつつ、十分な人数の審判とスタッフが確保できない場合でも開催できる方法を探ります。
【各チームの活動再開について】
本日発表の「チーム活動再開ガイドライン」に従って、段階的に活動を再開していきます。
このガイドラインは「これを守っていれば感染するリスクはない」といったような“安全基準“を表すものではなく、あくまで国・自治体・大学の方針や衛生環境基準を満たしていることを前提として、各チームが活動時の対策を検討するための最低限の対策と基準を提示するものです。
現時点では、ラクロスの練習や試合中における個々の行動のリスクは、定量的に把握することはできません。そのため、段階的にリスクを増やしていき、「一定期間(=2週間)行なって問題なかったという事実」をエビデンスとして次の段階に進んでいく、という考え方を取っています。
このガイドラインは、理事会とは独立した組織である「医科学委員会」や、米国の免疫学の専門家の方の助言に従い、現時点で明らかになっている最新の事実と、国や自治体が発表している客観的データなどを踏まえて総合的に作成しました。今後、新しい事実が判明した場合や状況が変わった場合には、速やかに変更を行い、新しいガイドラインを提示します。
以上が、本日発表した内容の要点と、そこに至った経緯の説明となります。
最後に一つ、とても大切なことをお伝えしたいと思います。
人々が自動車事故の低いリスクを許容しつつ車に乗ってきたのと同様に、私たちは、コロナウイルス感染のリスクを許容した上で活動を再開することを決めました。
これはつまり「感染者が出ることを想定している」ということであり、結果として不幸にも協会会員が感染してしまうことは十分に起こりうると考えています。それがラクロス起因なのかどうかの判別が困難なことも多いと思います。
万が一会員から感染者が出てしまった場合でも、JLAは、その個人やチームの情報を広く公開したり、糾弾・非難したりすることは絶対に行いません。誹謗中傷や風評からは全力で守ります。
協会会員とラクロスコミュニティの皆さまも、同じスタンスであって欲しいと願っています。
もちろん適切な対策を行なっていなかったことが分かった場合は、当然その責任を明らかにし、改善を行う必要があります。それでも、感染してしまったこと自体は責められるべきではありません。
繰り返しになりますが、JLAは万が一登録チームに感染者が出てしまった場合も、その個人やチームが不利益を被ることがないようにできる限りの準備を進めていきます。
会員の皆さまには自らの体調について正直に申告することを、そして登録チームの皆さまにはチームの状況を正確に報告することをお願いしたいと思います。ここが担保されていることが、今回の決断の生命線です。
大変長くなりましたが、今日お伝えしたいことはこれで全部です。
今年の公式戦を無事開催するためには、JLAはもちろん日本中のラクロス関係者が力を合わせることが不可欠です。
2020年の決断は間違っていなかった。
2020年があったから日本のラクロスは成長できた。
いつの日か笑顔でそう言えるように。
Bravely forward.
蛮勇ではなく真の勇気と知性を携えて、
私たちは進もう。
一般社団法人日本ラクロス協会
佐々木裕介(理事長) 寺本香(事務局長)
◆ 2020 年基本方針:
https://www.lacrosse.gr.jp/img/cms/policy.pdf
◆ チーム活動再開ガイドライン:
https://www.lacrosse.gr.jp/img/cms/guidelines.pdf
◆ 基本対策ガイドライン 別紙1:
https://www.lacrosse.gr.jp/img/cms/countermeasureguide.pdf
日本ラクロス協会広報部 LACROSSE MAGAZINE編集部