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2025年1月18日(土)に行われる「日清食品presents第34回ラクロス全日本選手権大会」(以下、A1※)で日本一が決まります。A1観戦をよりエキサイティングなものにするために出場チームの「主将の頭のなか」を覗かせてもらいました。
※A1(エーワン):全日本選手権のこと。ABSOLUTE ONE(アブソリュート・ワン)の略。日本一を決める戦いに加え、各地区の各世代の選手が集まってお祭りのような大会にするということを目指し、前回(第33回)から全日本選手権のことを「A1」と呼ぶことにしました。
参照:全日本選手権を「A1」という形にしたことについて(機関誌(2023-2024))
第1回 GRIZZLIES主将 金谷洸希さん(#11)の頭のなか
【日清食品presents第34回ラクロス全日本選手権 A1開催情報】
日時:2025年1月18日(土) 男子試合 16:30~
アクセス:飛田給駅からの地図
対戦相手(男子):慶應義塾大学(全日本大学選手権優勝)
日清食品presents第34回ラクロス全日本クラブ選手権大会 A1 特設サイト
ライブ配信はこちらから(作成中)
※開設後、お知らせいたします(LACROSSE MAGAZINE JAPAN編集部)
第1回は、2024年12月14日(土)に開催された日清食品presents第25回ラクロス全日本クラブ選手権大会(以下、全クラ)で優勝したGRIZZLIES(グリズリーズ)の主将#11金谷洸希(かなや ひろき)さんにお話を伺います。
「継続的に日本一」になるチームを目指して
金谷洸希さん(全クラ決勝戦後、観客へ挨拶)
― 金谷さんはGRIZZLIESの主将に就任されて、今年で何年目でしょうか。
金谷 主将は今年度(2024年度)からなので、まだ1年目です。
― 主将になるとき、どのようなチームにしたいと思っておられたのでしょうか。
金谷 GRIZZLIESは2021年に創部し、昨年(2023年度)に初めて全日本選手権大会で優勝しました。
初優勝した翌年である4シーズン目に主将を任せていただいたのですが、「継続的に日本一になる」ということを意識しています。
―「継続的」というのは難しいことかと思いますが、具体的にどのような取り組みをしているのでしょうか。
金谷 創部4年目のチームですので「GRIZZLIESの軸」がまだ定まり切れていないところがあります。軸が定まっていないと、単年度では優勝できるけれど、継続的に優勝することが難しくなると思っています。
FALCONS(ファルコンズ・2004年創部)やStealers(スティーラーズ・2009年創部)といった僕たちより歴史のあるチームは、それぞれチームとしての文化がしっかり根付いています。
文化というのは、どういう戦術がチームの強みであるかとか、個々の選手にとってどの技術が強みであるかとか、そういったことがチーム内で醸成されている状態のことです。
GRIZZLIESには、それがまだないんですね。
そこで、「GRIZZLIESの軸」を作っていくために、僕が主将に就任して初めてのキックオフミーティングでチームに伝えたことは、「日本ラクロスを牽引するチームになる」というビジョンでした。
全クラ決勝戦 vs FALCONS
―「日本ラクロスを牽引する」とは、具体的にどのようなことを言うのでしょうか。
金谷 1つ目は「継続的に日本一をとるチームになること」。
2つ目は「日本代表の中核となる選手をたくさん排出すること」。
3つ目は「学生ラクロスを強くしていくこと」。
この3つです。
― 3つ目の「学生ラクロスを強くしていくこと」というのは、A1で大学チームがクラブチームに勝つ、ということを指すのでしょうか。
金谷 それも含まれると言えば含まれています。
僕たちが言う「学生ラクロスを強くする」は、「学生からも日本代表に選出される」、また、「将来的に日本ラクロスを背負っていくような選手を輩出する」という意味で、GRIZZLIEの活動がその一助になればよいなと思っています。
コロナ以降クラブチームと学生の接点が減り、学生が日本のトップレベルに触れる機会が少なくなったと感じます。
コロナ禍でクラブチームが大学のグラウンドに入ることができなくなり(新型コロナウィルス感染拡大防止のための大学からの要請につき)、クラブチームと学生の間にどんどん溝が広がっていったように思います。
選手のパイが大きい学生ラクロスを強くすることは、日本ラクロスを強くすることに繋がります。
今後5~10年後、日本代表を背負うのはいまの大学生たちなので、試合や練習を重ねたり、実際にGRIZZLIEの練習(KOGUMA Practiceという名で活動)に参加いただくなどして、一緒に日本ラクロスを強くしていけたらなと思っています。
― 継続して日本一になるために掲げたビジョンは長期的なものですので、主将就任から1年で「これが実現した」とまだ言えないとは思いますが、この1年でチーム内に何か変化はあったのでしょうか?
全クラ決勝戦(#16箱崎蒼太選手。社会人2年目)
金谷 個人のスティックワークの技術が向上したと思います。
GRIZZLIESは、FALCONSやStealersと比較すると平均年齢が若いんですね。
若い選手が多いということは、ラクロスに触れてきた期間が短いということです。
ポテンシャルはあるけれど、スティックワークがない選手が多い。
スティックワークの弱みを補完するために、この1年、組織練よりも優先して長い時間を掛けて基本的なラクロスの技術を鍛えてきました。
基本的な技術を蓄積した上で最後に組織練を持ってきたので、基礎技術向上で幅ができた分、戦術に深みが出てきました。
― クラブリーグ戦や全日本クラブ選手権で勝ち上がるなかで、主将として一番苦労されたことは何でしょうか。
金谷 ラクロスの技術の面ですかね。
GRIZZLIESの選手は、学生のときから意識が高い選手が多いので、ラクロス外のことでは苦労はなかったです。
「ラクロス外」というのは、日々の食事管理や睡眠時間の確保、トレーニングのことです。
社会人は、土日2日しか集まって練習ができないので、練習の質を高めるために、平日にしっかり練習の準備をしましょうと言ってきました。
そこは、みんな素直に実践してくれていたと思います。
ですが、技術のところで苦労しました。
僕は日本代表活動もしていて(※2 プロフィール欄参照)、今シーズンは2024年9月に開催されたBOX世界選手権大会へ出場しました。
日本代表選手(FALCONSやStealersの選手が多数いる)は基礎スキルが高いので、そのレベルを体感したあとGRIZZLIESの練習に入ると、経験の浅さから来る基礎技術の不足というのが目に付きました。
とにかく基礎技術固めをするために時間が掛かった、というのが苦労した点でした。
― FALCONSやStealersの選手と比べて、GRIZZLIESは個人技術で負けていると感じてこられたなか、リーグ戦で両チームに勝てたのは何があったからだとお考えでしょうか。組織力の面で補い合えたということがあったのでしょうか。
金谷 うーん、どうなんですかね。
若手が主体的にプレーや発言ができる環境を作るよう心がけていたというのはあります。
トップダウンというよりは、みんなでしっかり話し合って、みんなでラクロスが上手くなるよう意見交換できる環境作りです。
上(の世代)は若手がどう考えているか引き出さないといけないし、若手は上(の世代)に訴えないといけない。
あと、幹部のなかに社会人2年目の#18辻野勝巳くん(ディフェンスリーダー)を入れるなど、若手の選手たちに「自分たちがチームを作るのだ」と意識を持ってもらうようにしました。
若手の思考回数の多さが、個人技術の不足を補えたのかもしれないですね。
ディフェンスリーダー#18辻野勝巳選手
― A1出場までの道のりで、主将として一番うれしかったできごとは何でしょうか。
金谷 全クラ決勝でのFALCONS戦ですね。
このとき、GRIZZLIESは主力選手が抜けていたんです。
ディフェンスミディで副将の#1柳井宏太くん(社会人5年目)やオフェンスミディの#21後藤功輝くん(社会人6年目)といった核となる選手がケガで抜けていました。
2人とも2023年世界選手権大会・2024年BOXラクロス世界大会の日本代表です。
また、昨年度の学生日本一・日本体育大学卒業の#51渡邊壮太郎くん(社会人1年目)もケガで試合に出ていませんでした。
僕も全クラ決勝戦で前半にケガをして、後半はベンチにいました。
核となる選手がいないなか、若手選手が「どうしよう」と焦ることもなく、フィールド内で、自分たちで試合を組み立てているのを見ていて感心しましたね。
「成長したんだなぁ」と実感できました。
胴上げされる金谷さん
― このA1までの道のりのなかで、チームのどなたに一番感謝していますか。
金谷 一番は副将の#1柳井宏太くんと#43平塚弘喜くんです。
主将として、僕が迷ったときは色々相談に乗ってくれるし、色んな視点でものごと考えてくれるので、いい助言をもらっていました。
あとは、オフェンスリーダーの#91乘田英樹くんとディフェンスリーダー#18辻野勝巳くんにも感謝しています。
僕が主将としてチームのことにコミットできるのは、オフェンスリーダーとディフェンスリーダーが戦術のことをしっかりやってくれるという信頼があってのことだからです。
もし、その信頼がなければ、僕がチームのことより戦術にテコ入れをしなければならなくなっていました。
この4人には感謝しています。
オフェンスリーダーの#91乘田英樹選手
― A1ではどのような勝ち方をしたいと考えていますか。
金谷 正直、勝ち方を言える技術力があるわけではないので、こうしたいという形はありません。
ただ、GRIZZLIESの強みはフットワークやアジリティの部分なので、泥臭く戦いたいと思っています。
グラウンドボールやライドで中盤を制してチームに流れを持ってくる、といったところを愚直にやれば、おのずといい結果に繋がっていくと思っています。
― 日本一を目指すなかで、プロ選手ではないながらも「プロ意識」を持つ必要があるのかなと思うのですが、GRIZZLIESの選手たちの意識というはどういう感じなのでしょうか。
金谷 GRIZZLIESはプロ意識がある人もない人もいます。
ここで言うプロ意識とは、普段の食事や睡眠、トレーニングにしっかり目を向けているかどうかということを言っています。
もし、目を向けていない人がいたとしても、誰かできている人が口酸っぱく言って変わっていけばいいかなと思っています。
GRIZZLIESでは、普段の食事や睡眠、トレーニングのことは「プロ意識」というよりは「癖付け」と思っている人が多いのではないでしょうか。
ただもう一つ、GRIZZLIESの人に言っていることは、ちゃんと(普段している)仕事も「プロ意識」を持ってやろうねということです。
日本代表選手のなかには、ラクロスで食べていこうとしている人や、ラクロスのために転職する人もいるので、「仕事」と限定できないですが、僕が言いたいのは「ラクロスじゃない部分もプロ意識を持ってやることが大事だ」ということです。
(月曜日から金曜日まで自分が時間を割いている)仕事で突き詰めることができるなら、好きでやっているラクロスならもっと突き詰められるでしょ、と思っています。
― もう一つ、日本一を目指すチームに対してお聞きしたかったことがあります。GRIZZLIESは、日本一の延長線上に世界を見ているものなのでしょうか。日本一を目指すことと世界で戦うということをリンクさせているものなのでしょうか。
全クラ決勝戦後の表彰式の様子
金谷 GRIZZLIES入ってくる人には色々な価値観があります。
「GRIZZLIESが好きで入っている」という人もいれば、「日本代表になるためにGRIZZLIESという高いレベルの環境に入っている」という人もいます。
GRIZZLIESが掲げる3つのビジョン「継続的に日本一をとるチームになる」、「日本代表の中核となる選手をたくさん排出する」、「学生ラクロスを強くしていく」を並列にしているのは、「日本ラクロスを牽引するため」に3つのうちのどれかを通して、または自分なりの形で日本ラクロスに貢献してくれればいいと考えているからです。
「若手育成に力を入れたい」でもいいですし、「自分が日本代表になりたい」でもいいですし、「日本ラクロスのバイブルとしてGRIZZLIESを強くしていく」でもいいんです。
ただ、日本代表が多くいるチームですので、結果的に日本一と世界(日本代表)とをリンクさせている選手は多くいるのかもしれません。
― 3つのビジョンを並列させることで、日本ラクロスを牽引するためにいろいろな角度から、多様な価値観を持った選手がGRIZZLIESに集まるようにしているというお話は分かりやすく、おもしろかったです。お時間いただきありがとうございました。
金谷 ありがとうございました。
【プロフィール】
名前:金谷洸希(かなや ひろき)
背番号:11 MF 主将
出身大学:2019年3月 千葉大学卒業
クラブチーム選手歴:
2019年~2020年 FALCONS
2021年~ GRIZZLIES
日本代表歴(※2):
2018年 世界選手権出場(イスラエル・ネタニヤ開催)
2022年 SIXES日本代表 The World Games出場(アメリカ合衆国・バーミングハム開催)
2023年 世界選手権出場(アメリカ合衆国・サンディエゴ開催)
2024年 BOX日本代表 BOX世界選手権大会出場(アメリカ合衆国・ユーティカ開催)
Photo by 日本ラクロス協会広報部 小保方智行
Text by 日本ラクロス協会広報部 岡村由紀子