Columnコラム
2024年11月9日(土)に行われた「日清食品presents第25回ラクロス全日本クラブ選手権大会」の1回戦に出場した関西支部から勝ち上がったACL(エーシーエル)を紹介します。
第7回 関西支部(男子)からはACL
【ACLの試合結果】
- 日時:2024年11月9日(土)
- 場所:大井ホッケー競技場サブピッチ(東京会場)
- 対戦相手:Ardito(中四国・九州支部)
- 試合結果:5-7(1回戦敗退)
日清食品presents第25回ラクロス全日本クラブ選手権大会 特設サイト
関西支部(男子)からはACL(エーシーエル)が「日清食品presents第25回ラクロス全日本クラブ選手権大会」へ出場しました。どんなチームか、主将の#16佐山新之介さんと注目選手#0西濱虎之介さんにお聞きしました。
ACL集合写真(2024年10月26日撮影)
熱量と強度と切り替え
ACLは、ラクロス全日本クラブ選手権大会(以下、クラ選)へ関西支部から2大会連続9回出場しているチームです(※1)。
クラ選の見どころをACL主将の#16佐山新之介さんにお聞きしました。
「熱量と強度と切り替えです」。
熱量とは選手たちのラクロスに掛ける熱量とACLというチームに掛ける熱量。
強度は、プレーの強度。
切り替えは、トランジションの多さ。攻守の切り替えと一つひとつのプレーの切り替え、メンタルの切り替えです。
この3つが見どころだと主将・佐山さんは言います。
【ラクロス全日本クラブ選手権大会 歴代出場チーム 関西支部(男子)】(※1)
※2020年:新型コロナ感染症の感染対策のためにクラブ選手権・リーグ戦とも実施せず。
※1999年~2011年は準決勝と決勝のみ(1回戦=準決勝)。
※第1回(1999年開催)は東日本のチームのみ出場。西日本は2000年から出場。
※2014年までは「西日本支部」(現・東海支部のチームも当時西日本支部だったため現・関西支部リストの歴史に掲載)。
※2015年~「関西支部」(西日本支部という名前は消滅)。
※「1回戦戦績」欄の得点表記は、現・関西支部(西日本支部)が左。クラブ選手権のHOME・AWAYではない。
※NLC HORNETZ:2001年~。ナニワラクロスクラブからチーム名変更
※OPEC VORTEX:2006年~。中東ラクロスクラブからチーム名変更
※ACL 2大会連続9回目
関東(東日本)に勝つためにACL再建
主将の#16佐山新之介さん
ACLがクラ選へ初めて出場した2013年と翌年2014年は決勝戦まで進出し、準優勝しています(※2)。
ところが、2021年と2022年は関西支部リーグ戦2位でクラ選へ出場することもできませんでした。
「もともとACLは『関東(東日本)一強』を崩したくてできたチームです。それが勝ちから遠ざかると選手も離れていき、チーム存続が危ぶまれました」(佐山さん)。
このままではまずい、とチーム再建に向けて立ち上がった佐山さんは、2023年に主将となり「強いACL」を取り戻すために3年計画を立てました。
1年目(2023年)は、具体的な目標を決めずに、スピード感やトランジション、「関東に勝つ」といった精神面なども含め、ACLのスタイルを取り戻すための土壌作りに注力しました。
その結果が、3大会ぶりのクラ選出場でした。
2年目の今年は「日本一になる」です。
【ラクロス全日本クラブ選手権大会 ACLの準決勝戦績】(※2)
※2020年:新型コロナ感染症の感染対策のためにクラブ選手権・リーグ戦とも実施せず。
※「準決勝 戦績」欄の得点表記は、ACLが左。クラブ選手権のHOME・AWAYではない。
※2021年はHELP、2022年はGOLD ZEALERがクラ選出場したため空欄にしている。
※2024年は1回戦でArdito(中四国・九州支部)に敗退したため空欄
ずっと強いACLであるための3年計画の3年目
3年計画の3年目がどうなっているかは、チームにも伝えられていませんでした。
今回、『LACROSSE MAGAZINE JAPAN』のサイト上で公表してもよいと言うことで、教えてもらいました。
「再び日本一になる」。
佐山さんは、「この年だけACLは強かった」ではだめだという意味を込めて、3年計画の3年目に「再び日本一になる」を掲げました。
ずっと強いACLであるための土壌づくりをしたあとは「日本一」を繰り返すのみ。
ACLは日本一に挑みます。
ELKS(エルクス)の存在
#0西濱虎之介さん
佐山さんが主将となり3年計画を立てた2023年。ちょうど同じタイミングで、ELKS(エルクス)という若いチームがある決断の時を迎えていました。
ELKSは、2021年に創部し、2022年までの2年間、関西支部リーグ戦に参加したクラブチームです。
戦績は、関西支部リーグ戦で2021年に4位、2022年に3位でした。
ELKSを立ち上げ、2023年にACLへ移籍した選手の一人が#0西濱虎之介さんです。
「自分たちが大学を卒業した2021年に『ラクロスを盛り上げたい・関西地区を盛り上げたい』とELKSという新チームを立ち上げました」。
西濱さんたちELKSメンバーは、「学生に還元していきたい」という大きな志を持ちましたが、2年間関西支部リーグ戦へ参加してみて、ギャップが生まれたと言います。
「学生に還元するには、『学生が憧れるチーム』であることが必要だと思っています。社会人としてしっかりしていることも大事ですが、それよりも『強い』ということが大事です」。
自分たちは、果たして、学生に還元できるチームなのか。
西濱さんたちELKSメンバーは、「いまのままでは無理だ」という結論に達しました。では、どうしたらいいのか。
話し合った結果、ELKSの存続よりも、既存のチームで活動し、そこで「強さ」を体現したほうがよいのではないかと、ACLへ移籍することを決めたのです。
「経験値が高く、強いチームで学ぶことは、ELKSのチームコンセプトである『学生に還元』に繋がると思いました」。
そう結論づけたタイミングがACLの建て直しが始まるのと同じタイミングだったのです。
ウィンウィンの移籍
関西支部クラブチーム決勝戦にて
「ELKSは長く続かないと思った」。
西濱さんは自身でそう振り返ります。
「若い選手がELKSというチームを作って頑張れとは思ったが、存続には限界があるとも思った」。
佐山さんも振り返ります。
佐山さんは、ACL再建に向けて「勝つために何が必要か」と考えたときに、「人とお金と場所」だと思いました。
「人がいないと練習ができない。ELKSの選手たちはACLにとって必要だった」。
佐山さんは、ACLが勝つためにELKSメンバーに入ってほしかった。
西濱さんはELKSのやりたいことを実現するためにACLに入りたかった。
双方の要望がぴたりとあって、ウィンウィンの関係で実現したのがELKSメンバーの移籍だったのです。
「社会人になったら、もっとラクロスがうまくなれる。学生にそう思ってほしいから、ACLでラクロスをすることを選びました」(西濱さん)。
プロ意識
関西支部クラブチーム決勝戦にて
さて、3年計画の2年目である今年2024年。ACLの見どころである「強度」は、上がってきているのでしょうか。
「去年も言っていたことを今年もやっている。強度は上がってきています」。
佐山さんは、関東(東日本)のチームに勝つために平日のオフプレーの部分でも大事にしています。
「社会人になってラクロスをするとなると、その時間を自分たちで作らなければなりません。気持ちはプロ意識があるんです。でも、環境がプロじゃない。ラクロスで食べていけるわけではないので、ラクロスをするために仕事をしています」。
クラ選で対戦する関東(東日本)のチームには日本代表選手も多く、プロじゃない環境のなか、プロ意識高くラクロスをしている選手ばかりが所属しています。
「そんなチームに勝つためには、自分たちも同じ環境を作らなくてはならない」と、佐山さんや西濱さんたちACLの選手たちは、日々トレーニングや練習のための時間を積極的に作っているのです。
ラクロスが好き
『LACROSSE MAGAZINE JAPAN』編集部では、全日本クラブ選手権大会を観てくださる方を増やしたいという思いに加えて、「ラクロスを続ける人を増やしたい」という思いもあります。
ACL創部メンバーの最後の一人であり、ACLを強いチームとして復活・存続させたいとチームをまとめる主将・佐山さんに「なぜラクロスを続けているのか」お聞きしました。
「社会人でラクロスしなくてもいいのにするのは、ラクロスが好きだから。ACLメンバーのことをいい仲間だと思っているし、ベンチに戻ると常にみんなが話をし、熱量を感じる。こんな熱量を日常生活で感じられますか」。
ACLの創部メンバーが辞めていっても、佐山さんが辞めなかったのは「お世話になったチームを立て直したいという思いがあったから」と、佐山さん本人ではなく、西濱さんが隣で付け加えてくれました。
佐山さんのなかにある熱い思いは、若い選手に通じているのです。
「自分のラクロスキャリアのなかで、最後に何ができるか考えたときに、ACLを元あった形に戻し、更によくして、永続的に強いチームにすることだと思ったんです」(佐山さん)。
クラ選では、ACLが勝つところを観て、ここACLでラクロスをしたいと思ってもらえたら嬉しい、と佐山さんは語ります。
決定率を上げること
閉会式での西濱虎之介さん
ACL在籍2年目の西濱さんに、クラ選で自身の見どころはどこかお聞きしました。
「得点に絡むことが多いので、難しいところからのキャッチとその後のシュートです」。
昨年のFALCONS戦では、西濱さんが仕掛けた1:1で1得点しており、自信を付けたと言います。
今年はチーム全体で決定率を上げ、西濱さん自身も得点する回数を増やすこと(強度を上げること)で、勝利に結び付けたいと意気込みを語ってくれました。
主将・佐山さんの熱い思いを汲み取り、自身もELKSを創部するほどの熱さをラクロスに持っている西濱さん。その熱量を会場で直接感じてもらいたいです。
準決勝(関西会場)はArdito(中四国・九州1位) 対 FALCONS(東日本2位)に
11月9日に行われましたクラ選1回戦において、ACLに勝利したのはArdito(中四国・九州)でした。
Arditoの4Q目での追い上げと、「勝ちたい」という思いの強さは、配信の画面越しでもひしひしと伝わりました。
ACLも4Q残り時間が減りゆくなか、得点を返したいと粘りを見せ、手に汗握る展開となりましたが、5-7とACLは1回戦敗退しました。
11月16日、関西会場では、Ardito(中四国・九州1位) 対 FALCONS(東日本2位)の対戦となります。
関西地区の大学生も、ラクロスから離れたOB・OGのみなさんも、普段関西では見ることのできないチームを直接見ることができる機会です。是非、会場へ足を運んで刺激を受けてください。
会場へ直接行けないという方は、配信を是非ご覧ください。
【チーム詳細】
- チーム名:ACL(エーシーエル)
- 創部年:2012年
- Instagram:https://www.instagram.com/alleycatslacrosse/
【プロフィール】
名前:佐山新之介
背番号:16 MF 主将 出身大学:2008年3月 同志社大学卒業 クラブチーム選手歴:2012年~ ACL |
名前:西澤虎之介
背番号: 0 AT 出身大学:2021年3月 神戸学院大学卒業 クラブチーム選手歴: 2021年~2022年 ELKS 2023年~ ACL
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Photo by 日本ラクロス協会広報部 中村真澄
Text by 日本ラクロス協会広報部 岡村由紀子