Columnコラム
2024年8月に本誌上におきまして、FPJ Award2024が発表され(FPJ Award 2024選出チーム発表)、7地区から合計10チームが受賞しました。受賞チームのうち4チーム(4地区)がどのような取り組みをしてきたのかご紹介します(全5回)。
FPJとは、フレッシュマンプロジェクトの頭文字で、エフピージェイと読みます。1998年より開始した公益社団法人日本ラクロス協会の事業で、新入生勧誘活動の促進・ノウハウの蓄積をするために、全国の学生連盟・事務局・指導者・加盟大学が連携を取る組織横断的なプロジェクトです。
第5回 信州大学(女子)の取り組み
東海地区からは信州大学(女子)がFPJ AWARD2024を受賞しました。東海学生ラクロスリーグ戦では2部リーグに所属するチームです。前年比2倍の新入部員を獲得しました。これまでの新勧と何を変えたのでしょうか。
前年と比べて倍の入部者数
「新勧を成功させる」というとき、信州大学(女子)のゴールはどこにあったのか、FPJ担当の内田愛乃(うちだ あのん)さんにお聞きしました。
「新勧のゴールは、25人の入部が目標でした」。
結果は、16人(2024年10月3日取材時の人数)でしたが、16人という数字は前年の入部者8人の倍です。
「目標人数には届いていませんが、嬉しい数字でした」(内田さん)。
2025年度への危機感から
新勧を始める前の2024年春、新2年生~新4年生の人数が24名でした。24名のうち大半が新4年生だったので、新4年生が引退すると、翌2025年度リーグ戦に出場できる人数に満たなくなるという危機感から、信州大学女子ラクロス部「全員」で2024FPJに取り組む動機づけとなりました。
去年とまったく変えた
では、2024FPJでは何を変え、何を新たに取り入れたのでしょうか。
「去年とは、まったく変えました」という内田さんですが、具体的には、
- SNSをしっかりした。
- イベントの数を増やした。
という2点が、去年と変えた点でした。
SNSをしっかりした
SNSについて去年と変えた点は、
- 新勧用SNSの始動時期を早めた(2024年度は2023年12月1日から投稿が始まっています)
- インスタグラムの投稿頻度を上げた
- オープンチャット(1年生は匿名で入ることができる)を活発に動かした
の3点です。
「ラクロス」の知名度を上げるために、まずは1年生を集められる場所がほしいと考え、第一段階としてオープンチャットを動かすことにしました。
1年生が求めている情報を発信することで、ラクロス部に興味あるなし関係なく「1年生」を集めようとしたのです。
オープンチャットに投稿する内容については、新入生が何を求めているかチーム内でミーティングをし、「こういうのがいいんじゃない?」など意見を出し合い、吟味して決めていきました。
イベントの数を増やした
①イベントは、ラクロス部で独自にしていたイベントだけではなく、信州大学全体で行う部やサークルへの勧誘イベントへ参加した。
②大学が入学前に新入生対象に行う健康診断やガイダンスなどの日程をチェックし、その学校行事が終わったあとの新入生が参加できるように新勧の日時を決めた。
SNSやイベントの頻度を増やそうと思うに至ったのは、新2年生に「去年、新勧を受けてみてどうだった?」とヒアリングしたとき、新2年生から「新勧の時期にラクロス部自体の団体としての知名度があまりなかった」という意見が出たことがきっかけでした。
2024年度では、「ラクロス部」という団体を周知する動きをしないといけない、と内田さんたちは新入生がいる場所に自ら出向くなど、これまでのやり方と変えることにしたのです。
実際に勧誘するまでの動き
新勧用インスタグラムより キャンパス同士が離れていることが伺える投稿
オープンチャットに1年生が集まってから、ラクロス部へ勧誘を始めるにはどのような段階を踏んだのでしょうか。
「オープンチャットなど、最初は部活の勧誘ではなく、1年生のコミュニティづくりのためのイベント(「松本さんぽ」など)をやっていると発信しました。イベントの内容もちゃんとコミュニティを作れるように実践していました。学校が始まるにつれて、徐々にラクロス部へ勧誘していくようにシフトしていきました」(内田さん)。
松本さんぽ
お祭り騒ぎを巻き起こせた?
2024年度新勧イベントカレンダー(インスタグラムより)
信州大学にとって「お祭り騒ぎ」と思えるイベントはどれでしょうか。
「どれもにぎやかな雰囲気を作ることができ、1年生も一緒にイベントができて楽しかったし、お祭り騒ぎだったと思います」(内田さん)。
入学式前は、1年生全員が通うキャンパスがある松本市の観光地を回わるイベントを開催しました(松本さんぽ)。
4月になると、男子ラクロス部と一緒に開催したスポーツフェスティバル(体育祭みたいなイベント)、女子ラクロス部だけで行ったレクリエーション(おかしを食べながらミニゲーム)など 毎週のようにイベントをしていました。
スポフェスの様子
スポフェスの参加者
練習と新勧のバランス
4月の新入生勧誘イベント時期の練習については、まったくストップするわけではなく、午前にイベントをして、午後に練習をするなど、どちらもするようにしていました。
「ラクロスに興味のある新入生は練習も見たいと思うので、常に見学可能にして、練習もしっかりするようにしていました」(内田さん)。
ソフトラクロス
ナイター見学会
主将は巻き込めたか?
2024FPJのスローガンには、「主将を巻き込む」というものがありますが、信州大学女子ラクロス部では主将巻き込めたのでしょうか。
「そのスローガンを主将が主将会で聞いて、自分から新勧をがんばろうと動いてくれました」(内田さん)。
主将が自ら動いてくれたおかげで、信州大学では、春休みから頻繁に新勧に向けたミーティングを行ったり、練習より優先して新勧に日程を割いたりしてくれました。
各地区FPJ代表をうまく使う
2024年度東海地区のFPJ代表・香田恵李(こうだ えり)さんは、FPJ AWARD2024に信州大学を選出した理由の一つに、「東海地区FPJ代表との面談で、FPJ担当も主将も『他の大学ではどうしていますか?』など一番積極的に質問をしてくれた」ということを挙げています。
FPJ代表は、各大学のFPJ担当者や主将と個人面談をします。
「FPJ代表はたくさんの大学と個人面談をしているので、多くの情報を多く持っています。対面が難しければ、オンラインでもLINEでもいいので、気軽に相談にしてもらえたらいいなと思います」(香田さん)。
距離の問題はコミュニケーションで乗り切る
FPJ AWARD2024選出理由としてもう1点、香田さんは「信州大学はキャンパス同士が離れている(長野県内4市町村に5つのキャンパスがある)という地理的に不利な状況の中、仲間と互いに相談し合っている姿が印象的だった」と、チーム内でコミュニケーションが取れていることも挙げています。
信州大学FPJ担当・内田さんに新勧に関するコミュニケーションをどう取ればよいかお聞きしました。
「チーム全体が主体性を持って一人ひとりが新勧をやることが大事だと思っています。信州大学はもともと人数が少ないということもありますが、全員に新勧の係がありました。ミーティングもたくさん行ったことで、みんなでいい意識をもって取り組めたのだと思います」。
『信州大学女子ラクロス部』の魅力
信州大学全体としての新勧のゴールは「目標人数」でしたが、内田さん個人にとっての成功はなんだったのでしょうか?
「目標人数も大事なことですが、毎年辞めていく新入部員が多いことも課題としてありました。続けてくれる新入生に入ってもらうにはと考えたら、新勧で普段の自分たちの仲の良さを出すことが大切だと思いました。イベントでは、ラクロスというよりは『信州大学女子ラクロス部』と所属する部員たちの魅力を出したい。出せたら、新入生は入ってきてくれるし、続けてくれると思いました。新勧イベントを見ていて、部員自身も楽しんでくれていたので、その姿を見ていたら誇らしく思えて、自分としては成功だと思えました」。
部員も楽しそう
2025FPJに関わる全ての人へ
2025FPJに向けて、FPJに関わる全国の大学生に向けて、内田さんに「こうしたら楽しいよ・充実できるよ」というアドバイスがあれば、とお願いしました。
「(競技としての)ラクロスの魅力を伝えることも大切ですが、部員自身が自チームのことをもっと大切にして、チーム愛を持ってみんなで楽しく新勧することが大切だと思います。部員自身も楽しめる新勧を心がけたら、新人勧誘活動はおもしろいものになると思います」。
FPJ担当者同士の関りを深めたい
2024年度東海地区FPJ代表の香田さんにも、2025FPJに向けてアドバイスをお願いしました。
「FPJ代表は各大学のFPJ担当や主将と個人面談をしますが、来年は各大学のFPJ担当者同士の関りが深められたらと思っています。FPJ担当同士で新勧について情報を共有し関りを深めることで、FPJにモチベーションを挙げることができると思います。主将は主将合宿があるので、そこで新勧について情報共有し、関りを深めてほしいと思います」。
【信州大学女子ラクロス部 SNS紹介】
新勧用インスタ:https://www.instagram.com/lax24_shinshu/
メインインスタ:https://www.instagram.com/shinshu_lax/?hl=ja
X:https://x.com/shinshu_lax?s=11
以上で「FPJ AWARD2024受賞チームの取り組み」は最終回となります。
受賞チームの取り組みには、2025FPJへのヒントがたくさんあったと思います。
自分が所属するチームの良さを再確認し、春にはたくさんの新しい仲間を招き入れてくださいね。
プロフィール
名前:内田愛乃(うちだ あのん)
チーム名:信州大学 学年:3年生 役職名:FPJ担当 |
名前:香田 恵李(こうだ えり)
チーム名:岐阜大学 学年:4年生 役職名:FPJ代表(東海地区) |
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機関誌「LACROSSE MAGAZINE JAPAN 2023-2024」
写真提供:信州大学女子ラクロス部
Text by 日本ラクロス協会広報部 岡村由紀子