Columnコラム
新型コロナウイルスの世界的流行によって混乱に陥った2020年。感染リスク、経済的打撃、長引く自粛による精神的疲労。世界中の活動が制限される中、日本におけるラクロスの活動を止めないために、私たちに何ができるのでしょうか。
”Inside JLA”では、ラクロスコミュニティ全員でこの脅威を乗り越え成長するために、JLAが今どんな課題を抱え何を考えているのかを、JLAの中のいろいろな人たちにオープンに語ってもらいます。
Inside JLA 2021 | vol.1: Make the future of lacrosse 2021.
安西:ラクロス協会は、日本のラクロスの発展のために様々な取り組みを行なっているんですが、それを効果的に伝えられていなくて、「結局何をやっているの?」って思っている人がたくさんいると思うんです。協会の決定事項を通達するだけではやっぱり人の心って動かせないんですよね。この”Inside JLA 2021”で「日本のラクロス界はこんな課題を抱えているよ、こんな新しいこと、面白いことに取り組んでいるよ」という話をすることで、ラクロスコミュニティの皆さんが今まで以上に自由に、主体的に活動できるようになっていただけたらと思っています。
Inside JLA 2021の第1弾は、協会はコロナ禍でどうやって新しくラクロスを始める人を増やしていこうと考えているのか?についてお聞きしたいと思います。浅井さん、よろしくお願いします。
浅井:よろしくお願いします。今日は、コロナ禍によって何かと暗い話題の多い世の中ですが、ラクロス界は逆境に負けず、明るい未来を目指して進もうとしているんだ、という事をお伝えしたいと思います。とはいっても、足元の状況は正直かなり悪いので、今回は我々が直面している具体的な課題についても皆さんに知っておいてもらいたいと思います。
ー 常識にとらわれない、枠を越えていく取り組み
安西:去年の11月7日に、スポーツ協会ではあまり見られない、日本ラクロス協会による成長戦略発表会を開きました。その成長戦略発表会で打ち出した未来の新しい取り組みとして、「6人制ラクロス」「ブランドデザインパートナーの決定」「ユニフォームへの広告掲載解禁」を発表させていただきました。
浅井:一方で、ラクロス協会がどのような未来を目指しているのかについては伝えさせてもらったけど「現状、もっと足元のところはいったいどうなっているの?」という疑問の声もありました。なのでここでは、ラクロス界の現状についてご紹介させていただきます。
一言で言うと「めちゃくちゃしんどい」です。
昨年はコロナの影響もあって、新入部員が例年より2000人減ってしまい、会員登録費が当初の予定より大幅に下回りました。全オフィスの退去、会議の完全オンライン化による交通費の大幅削減、会員DBの電子化によるコスト削減などの対策を打ってきましたが、それでも昨年度のラクロス協会は赤字となっています。企業協賛の募集等も始めていますが、現状では会員を安定して増やしていくことが、協会収益のの増加、継続的な発展につながると考えています。そのためにも、新規会員獲得を最優先事項として様々な施策を打ち出しています。
安西:より多くの会費を集めたいからという理由ももちろんありますが、それよりも日本のラクロス界の未来を担う人たちを増やしたい、というのが一番の理由ですよね。部員が少なくなって存続の危機にあるチームもたくさんあり、そこに対してなんとかしなければという危機感が常にあります。新入部員が入ってくれないとチームの人数も数自体も減ってしまい、日本のラクロスは衰退してしまいます。
多くの新入生にラクロスを知ってもらい、ラクロス人口を増やしラクロス界を発展させるために、例年にない規模で様々な新人獲得プロジェクトを進めているんですよね。
浅井:そうですね。新人獲得プロジェクトのお話をするためにまず、「1年生タスクフォース」について紹介させてください。新型コロナの影響で、新入部員の数が大幅に少なくなっている現状を踏まえ、「新入生をどう増やしていくのか」「どう定着させていくのか」ということを考えて実行する専門のチームを2020年の8月に立ち上げ、「1年生タスクフォース」という名を付けました。
安西:浅井さんはこのプロジェクトのリーダーですけど、具体的にどんな活動をしているんですか?
浅井:現在、1年生タスクフォースでは、新人獲得のために4つのプロジェクトを進めています。「SNS広告の出稿」「日本初のラクロス番組制作」「新入生向けリクルートサイトの開設」「東京メトロへの広告出稿」が現時点での主なプロジェクトです。この中でいうと、「SNS広告」は去年も行っているので、ラクロスコミュニティの皆さんはイメージしやすいのではないでしょうか。
安西:昨年のSNS広告は、実は非常に効果がありました。クラウドファンディングを通じて支援して頂いたお金で5ヶ月間にわたって、Instagram,Twitter, YouTubeの3つのSNSへ出稿したのですが、広告効果の分析結果は驚くほどでした。
8月31日以前に入部した新入部員(608名)に対してアンケートを行ったところ、「ラクロス協会のSNS広告を見たことがありますか」という質問に84%が「ある」と回答し、「ある」 と回答した510人の中で、「広告を見たことでラクロスに興味を持ったか」という質問には73%(373人)が「はい」と答えたんです。これって、SNS広告の効果としてはあり得ないパフォーマンスで、もし広告を打ち出していなかったら新入部員数はもっと少なくなっていたかもしれません。なので今年も、SNS広告には力を注いでいます。
浅井:1年生タスクフォースで現在進めている2つ目の新人獲得プロジェクト「日本初のラクロス番組制作」については、私から紹介させていただきます。まずはコチラをご覧ください。
サッカーの元日本代表選手である中澤佑二さんはラクロスを非常に応援して下さっており、番組出演を快諾していただけました。番組内容は、ラクロスをプレーしたことがない中澤さんに対して、代表の選手がラクロスを教えてうまくなってもらう、というのがメインとなっています。それに加え、ラクロスをやっている人の魅力や、学生ラクロスチームの魅力を伝えるための紹介コーナーもあります。「ラクロスって、こんな楽しそうな生活が待っていて、魅力的な人がいるんだ」と感じて頂けるような番組にしたいと思っています。JLAも制作に全面的に協力しており、ラクロスについて正しい知識を届けつつ、ラクロスに興味を持ってもらいたいと思っています。
安西:僕も初回の収録に立ち会わせていただいたのですが、中澤さんの熱量がものすごくて、「あ、これはたくさんの人に刺さりそうだな」と思いました。
さて「SNS広告」「日本初のラクロス番組の制作」ときて、3つ目は「新入生向けリクルートサイトの開設」ですね。社会において活躍しているラクロス出身者の方や、世界にチャレンジしている方、ラクロス出身者以外の著名な方をお招きしてインタビューを行い、それを記事化したものがメインコンテンツになっています。
新歓時に各大学が「ラクロスって楽しいよ。ラクロスやってるとこんな良いことがあるよ」と伝えることは非常に重要な一方で、ある程度限界があると考えています。いくら魅力的な言葉を並べたりすごいことを言っても、新入生からしたら「ラクロス部に入ってもらいたいからそう言うんですよね」と捉えられてしまい、そこまで深く伝わらないこともあると思うんです。でも、同じことを社会に出て活躍している大人や、ラクロスと関係のない外の人の話をJLAがパブリックに発信することで、ラクロスに興味を持ってくれるのでは、と考えています。
浅井:最後のプロジェクトは「東京メトロへの広告出稿」ですね。
「学生スポーツのサポートの一環で、メトロの広告枠にラクロスの宣伝をしませんか?」と言っていただいた企業さんと一緒に進めている取り組みです。
安西:このように、ラクロス協会では「学生の力では難しいこと」「協会にしかできないこと」に優先的に取り組んでいきます。でも、SNS広告やラクロス番組って、それだけで新入生がめちゃくちゃ入るかというとそうじゃないと思うんです。結局、各チームや一人ひとりの部員がちゃんと考えて、たくさん工夫して、熱量をもって新歓することが何よりも大事なので、それを促進するような各大学へのサポートも並行して行っています。浅井さんがリードする形で、新歓のためのノウハウや、外しちゃいけないポイントみたいなのをセミナーで広めているんですよね。
浅井:はい、今年の新歓に対するセミナーは2月からはじめていますね。ノウハウといっても2種類あって、「これをやるとよい」と言う知識と、「チームをこういうマインドに変えることが大事だよね」「ラクロスの価値についてチームの中で話し合うことが大事だよね」みたいな知恵の2種類があると思っているので、チームの状況に応じて提供しています。
特に、全国250チームのうち、現時点で2‐4年生(2021年からの新学年)の部員数が20名以下の大学が110大学存在していいます。その中の55大学に対して、今年のリクルーティング活動にそのまま使える「自チームの魅力を見つけるワークショップ」㈱リクルートキャリアさんのお力を借りて実施しました。
また、200大学くらいが、新歓に対する理解や考えを深めるための知恵を学ぶイベントに参加してくれました。
安西:今年から、ユニフォームの広告掲載が解禁されましたが、そこに注力できている大学って、どちらかと言ったらラクロス界の中でもかなり恵まれてる大学だと思います。スポンサー探しどころでなく、そもそも今年の部の運営をどうしよう、今年のリーグ戦には出れるのか?みたいなチームは全国で100チームぐらいあるんですよね。もちろん、都心にいる中規模以上の大学を支える活動も重要なのですが、全国の存続の危機に瀕している小規模なラクロス部もサポートする必要があると思っています。
浅井:そうですね。新人獲得プロジェクト「Make the future of lacrosse 2021」のお話をするためにまず、「1年生タスクフォース」について紹介させてください。新型コロナの影響で、新入部員の数が大幅に少なくなっている現状を踏まえ、「新入生をどう増やしていくのか」「どう定着させていくのか」ということを考えて実行する専門のチームを2020年の8月に立ち上げ、「1年生タスクフォース」という名を付けました。
結局、関東の目線だけで物事を進めてしまうと、地域性などが考慮されないため、その地区の会員からしたら「ナニソレ」という状態になってしまうんです。地域の声を聞きながら一緒に新歓の土台を作っていくことが大事だな、とセミナーを通じて感じています。ラクロスらしさはやっぱりボトムアップなのかな、とも。
安西:なるほど、浅井さんは新歓のノウハウをたくさん持っているけど、地域の細かいところを把握しているわけではないですもんね。一方で、地域に根ざしているラクロス出身の社会人は、各地域、各チームの事情を詳しく知っているけど、新歓に関するノウハウをあまり知りません。そこで両者がタッグを組んで、浅井さんが新歓のノウハウとか、こういう教材があるよとか、こういうやり方がいいと思うよというのをインプットして、彼らがその地域の特性に合わせて各地区でやってくれているんですね。
浅井:そうです。また、各大学への新歓のサポートと並行して、ラクロス部がない大学に新しくラクロス部を創設していく動きもあります。日本全国約700大学のうち、ラクロス部があるのはおよそ250大学しかありません。新たなラクロスの芽を増やしていくということも、各地区の1年生タスクフォースメンバーにお願いしています。
安西:浅井さん、ありがとうございました。今回は、ラクロス協会の新しい取り組みや、課題を改善するための施策をざっくばらんにお話いただきました。今後の「Inside JLA 2021」では今回話したことを一つ一つ掘り下げて、お話ししていきたいと考えています。最後に浅井さんから全国のラクロッサーに向けてメッセージをお願いします。
浅井:今日は、ラクロス協会の取り組みを中心にお伝えさせていただきましたが、ラクロスの価値はラクロス協会の取り組みのみで決まるのか?といったらそんなことは決してないと思っています。我々ももちろん頑張りますが、我々の取り組みが、ラクロスコミュニティの方々に届き、皆さんが今まで以上に「ラクロスって面白いな!」と思っていただけるかどうかが大切だと思っていますので、取り組みを知っていただき、皆さんもワクワクしてくれたら非常にうれしいです!
日本ラクロス協会広報部 LACROSSE MAGAZINE編集部