Columnコラム

【Inside JLA】オトナがオトナの遊び場を創るために~日本クラブチームラクロス連盟のめざすところ~:第4回(最終回)


「日本一を目指したい」「年に数回試合ができたらいい」「転勤先にチームがあれば入りたい」。ラクロスへの取り組み方も楽しみ方も様々な人たちが加盟する日本クラブチームラクロス連盟。その多様な在り方を一つにまとめる連盟本部とはどのような場所なのでしょうか。ラクロスという「オトナの遊び場」を創るために奔走する連盟本部を取材しました(全4回)。


第4回 「日本一を目指すリーグ」で戦う意味

日本クラブチームラクロス連盟(以下、クラブ連盟)が運営するリーグ戦で唯一「2部制」なのが、東日本リーグ戦チャンピオンリーグ(以下、CL)男子です。CL2部リーグのDESAFIO(デサフィーオ)#17太田優選手にお話を伺いました。

唯一チーム数が増える東日本男子CL

クラブ連盟に加盟する5支部のリーグ戦のうち、ほとんどのリーグ戦が1部制ですが、CLとファンリーグ(以下、FL※)があり、さらにCLが2部制なのは東日本支部の男子だけです。

2024年CL2部は1チーム増えて、7チームになりました(1部は昨年と同じ5チーム)。

CLにいるということは、日本一を目指せるということですが、「3強」と言われる「FALCONS(ファルコンズ)」、「GRIZZLIES(グリズリーズ)」、「Stealers(スティーラーズ)」の壁は厚く、3強を倒してリーグ優勝することも3強に食い込むことも、1部4位以下のチームにとって容易なことではありません。

※ ファンリーグ(FL)とは:「全日本クラブ選手権大会」への出場権がないリーグ戦のことを言います。

CL2部制になってからのDESAFIO

DESAFIOはCLが2部制となった2014年(※2)、1部から2部へ降格します。その後2015年から2021年までCL1部との入替戦にも絡めずに2部リーグで試合をしていました。

2022年にCL2部優勝、1部昇格を果たしますが、翌年2023年には2部降格、今年は再び2部からのスタートです。

 

創部年目 開催年度 東日本リーグ戦 リーグ戦 プレーオフなど 部制 1部チーム数 2部チーム数
1 2002年 第12回 3位 1部制 6チーム
2 2003年 第13回 1位 1部制 6チーム
3 2004年 第14回 2位 プレーオフで2位 1部制 7チーム
4 2005年 第15回 3位 プレーオフで1位 1部制 6チーム
5 2006年 第16回 2位 プレーオフで2位 1部制 8チーム
6 2007年 第17回 4位 プレーオフで4位 1部制 7チーム
7 2008年 第18回 4位 2ndラウンドで4位 1部制 6チーム
8 2009年 第19回 4位 2ndラウンドで3位 1部制 7チーム
9 2010年 第20回 3位 2ndラウンドで3位 1部制 7チーム
10 2011年 第21回 2位 1部制 9チーム
11 2012年 第22回 6位 1部制 9チーム
12 2013年 第23回 3位 1部制 9チーム
13 2014年 第24回 5位 (自動降格) 1部/2部制 5チーム 4チーム
14 2015年 第25回 2位 2部/2部制 5チーム 3チーム
15 2016年 第26回 2位 2部/2部制 4チーム 4チーム
16 2017年 第27回 3位 2部/2部制 4チーム 4チーム
17 2018年 第28回 2位 2部/2部制 4チーム 4チーム
18 2019年 第29回 2位 2部/2部制 4チーム 4チーム
19 2020年 特別大会 2位 2部/2部制 5チーム 4チーム
20 2021年 第30回 3位 2部/2部制 5チーム 4チーム
21 2022年 第31回 1位 入替戦勝利で1部昇格 2部/2部制 5チーム 5チーム
22 2023年 第32回 4位 入替戦敗退で2部降格 1部/2部制 5チーム 6チーム
23 2024年 第33回 2部/2部制 5チーム 7チーム

※2 DESAFIO戦績表

DESAFIO入部のきっかけ

太田優選手がDESAFIOに入部したのは2020年、岩手大学を卒業して4年目、DESAFIO創部19年目の年でした。

大学を卒業してすぐは海外へ行き、帰国してからは母校・岩手大学でOBとして、ラクロス部の練習に顔を出すなど、「選手」からは離れて過ごしていました。

就職で東京へやって来るのは、卒業して3年目のときです。

東京で働くことを知ったDESAFIOのマネージャーから太田選手に「東京にいるのならば、DESAFIOでラクロスをやらないか」と連絡が来ました。

このDESAFIOのマネージャーというのが、太田選手が東北ユースのときのマネージャーだったのです。

東北学生リーグにいた太田選手にとって、「関東のレベルは高そうだが、自分はついていけるのか」「東北の選手だった自分は、関東のクラブチームで受け入れてもらえるのだろうか」と心配していましたが、DESAFIOのメンバーたちは暖かく、太田選手はこのチームでなら楽しくラクロスができると安心して入部を決めました。

2024年5月25日 BONDS戦にてディフェンスをする太田選手

CL2部リーグで戦う意味

「なぜCL2部リーグでラクロスをしているのか」

もともとは、これを聞きたくて太田優選手にインタビューを始めました。

「声を掛けられて入ったチームがたまたま2部リーグだった」というのが答えなのでしょうが、その後「1部リーグチームに入って、日本一を目指す道」や「FLに入って楽しくラクロスをする道」もあったはず。なぜDESAFIOにい続けるのでしょうか。

「確かに、1部上位のチームにいて日本一を目指すと楽しいんだろうな、と思います。その反面、ラクロスから数年離れていた上に、当時は特に『日本一になりたい』とか『上手くなりたい』といったモチベーションすらなかった自分を受け入れてくれたDESAFIOには本当に感謝していて、移籍をせずにDESAFIOでプレーを続けているのは、『このチームをなんとかしたい、このチームで1部昇格をしたい』という気持ちが強いんだと思います」。

ハーフタイム中のDESAFIOベンチの様子(2024年5月25日 BONDS戦にて)

DESAFIOへの恩返し「1部昇格」

太田選手が主将となった2022年、DESAFIOは2部リーグを無敗で優勝し、入替戦でも勝利、9年ぶりの1部昇格を果たしました。

それまでのチーム作りと何が変わったのでしょうか。

「自分が入部したとき主将を務めていた方の人柄が本当に良くて。その人のおかげで色々な地区の出身者がDESAFIOに入部したと思うし、結果として、部員数も40人以上いました。そういった意味では、とてもいいチームだったのですが、このままでは2部で終わってしまうような感覚があったので、チームのみんなが『主将』に僕を選んでくれたことを機にスイッチを入れました」

それまでと異なるチーム作りで、チームからの反発はなかったのでしょうか。

「みんな心のどこかで1部の舞台でプレーしてみたいと思っていたと思いますし、やっぱり勝ったら楽しいよね、とついて来てくれました」

2022年の1部との入替戦にはDESAFIOのOBも応援に訪れ、太田選手が知るDESAFIOの試合のなかで最も観客数が多かったと言います。

なお、その入替戦はサドンビクトリーまでもつれ込んだのですが、勝利の得点を決めたのは、ロングスティックの太田選手でした。

「チームに受け入れてもらった恩返しにDESAFIOで1部に昇格したいと思っていました。1部昇格できたことで、お世話になったチームメイトへの恩返しになったと思います。いい一年でしたね」。

2部降格もチームづくりの通過点

翌2023年、DESAFIOに長く属していた選手たちが退団したことを受けて、幹部は若い世代へと替わりました。

昇格したばかりのCL1部を若い幹部中心で戦いましたが、結果は入替戦で敗北し、2部に降格。

「CL1部で苦い経験をしたことで、幹部も学び、精神的に強くなったと思います。その経験は今年度のリーグ戦に活かされると思っています。再び1部昇格を目指しています」

太田選手は前年の2部降格を前向きに捉え、更には「DESAFIOを1部リーグに定着するチーム」「1部リーグの上位に食い込めるチーム」にしていくために、若い幹部たちに力を貸します。

CL1部でFALCONSと戦うDESAFIO(2023年7月22日 撮影)

CL2部チームという受け皿~僕も育ててもらった~

「CL2部には2部の役割があるんじゃないかなって思います。FLだと物足りない、でもCL1部上位に挑むのは厳しいという選手にとって『CL2部チーム』という受け皿あるのは良いことなのでは」と、太田選手は言います。

例えば、太田選手がそうであったように、一度ラクロスから離れた選手が戻れる場所であること。

また、学生時代チーム数が少ない(競争が少ない)地区にいた選手や、チーム数が多い地区だったとしても2部や3部チームにいた選手にとって、成長できる場所でもあること。

多様な在り方の一つとして、2部リーグのチームは必要なのです。

「僕もDESAFIOのチームメイトに育ててもらって、学生のときより成長できているんじゃないかと思っています」

クラブチームならではの自由とチャンス

クラブ連盟に加盟する支部によっては、チーム数が減少傾向のところもあります。

ラクロスから離れて数年経った人や今年卒業したばかりのOBOGに向けて、太田選手からクラブチームの魅力を伝えるならどんなところでしょうか。

「クラブチームというのは、誰でも参加ができるし、日本一はもちろん、各チームが掲げた目標にチャレンジできる環境がある。いろんな自由やチャンスがあっておもしろいですよね。そこが魅力だと思っています」。

ラクロスというオトナの遊び場を自分たちで創ることができるのが、クラブチーム。

一歩動き出せば、遊び場が目の前に広がるのです。


2024年各支部クラブチーム対戦カードや試合結果はこちら(公益社団法人日本ラクロス協会HP)から


DESAFIO #17 太田優選手

太田優選手 #17 DF

【選手歴】

2013~2017年 岩手大学ラクロス部(2016年は主将)

2014年 東北ユース選手

2020年~ DESAFIO(2022年は主将)

Photo by日本ラクロス協会広報部 海藤秀満

Text by 日本ラクロス協会広報部 岡村由紀子

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