Columnコラム

【Inside JLA】オトナがオトナの遊び場を創るために~日本クラブチームラクロス連盟のめざすところ~:第3回


「日本一を目指したい」「年に数回試合ができたらいい」「転勤先にチームがあれば入りたい」。ラクロスへの取り組み方も楽しみ方も様々な人たちが加盟する日本クラブチームラクロス連盟。その多様な在り方を一つにまとめる連盟本部とはどのような場所なのでしょうか。ラクロスという「オトナの遊び場」を創るために奔走する連盟本部を取材しました(全4回)。


第3回 支部の広がりに向けてこれからの展望

日本クラブチームラクロス連盟(以下、クラブ連盟)の本部長に就任した原健太郎さん。本部長として、これから目指すクラブ連盟とは何か。また、自身が所属している九州地区(※1)がクラブ連盟に加盟するまでの話を伺いました。

※1 クラブ連盟において「九州地区」という名称はありませんが(中四国・九州支部が正式)、分かりやすくするために「九州地区」と表記しています。

7地区開催を目指して

2024年からクラブ連盟本部長に就任した原健太郎さんに、本部長として目指すものは何かとお聞きしました。

「現在5支部(※2)開催のクラブチームリーグ戦を7地区(※3)すべてで開催することを目指しています」

7地区開催を実現するためには、現在、未加盟の北海道(女子)と東北(男女) (以下、「未加盟地区」と一括りにして表現します)が加盟することが必要です。

ただ、コロナ禍の競技人口減少で、実現への道のりは厳しくはあります。

※2 クラブ連盟の5支部とは、「北海道(男子)」、「東日本」、「東海」、「関西」、「中四国・九州」のことを言います。
※3 公益社団法人日本ラクロス協会には、北海道、東北、関東、東海、関西、中四国、九州の7地区があります。この7地区すべてでクラブリーグ戦が行われることを目指します。

競技人口の減少にどう対応していくか

コロナ以前の2017年をピークにクラブチームの競技人口は減少していました。2020年コロナ禍を経てさらに減少しました。

前本部長の布施昌也さんによると、「クラブチームへの入部者数はコロナ前後で変わっていないのですが、コロナ禍で退部者が増えたことが影響し、全体として減ってきている」のだそうです。

今年2024年はJLAに会員登録していた大学卒業生が一番少ない年でもあります。彼らは、コロナ禍で最も行動制限が厳しかった2020年4月の新入生たちだからです。

競技人口を増したいクラブ連盟にとっては厳しい1年になりますが、それでも、原さんのなかに「これをしよう」と思っていることがあります。

対面での会議を増やす

「自分が九州地区をクラブ連盟へ加盟させる前もそうだったのですが、公益社団法人日本ラクロス協会(以下、JLA)の事務局やクラブ連盟と『直接』話すという機会を増やしていきたいと思っています」

原さんも、自身が所属する九州地区が加盟する前の6年間、年に一度、JLAと意見交換会をしていました。

「未加盟の北海道(女子)と東北(男女)と直接話をすることで、どんなラクロスをしたいと思っているのか思いを知ることができるし、クラブ連盟がどんなラクロスの場を創っていこうとしているのかこちらの思いを伝えられるし、直接会う機会を作ることが今は一番したいことです」

直接会う機会は、これまでコロナ禍でオンラインのみだった本部役員会でも増やしたいと原さんは言います。

「先日(2024年5月11日)の本部役員会で、4年ぶりに直接顔を合わせて話ができたのはとてもよかったなと思います。直接会うと、熱量などオンラインでは伝わらないものも伝わってくるので」

未加盟地区ではどんな遊び方をしているのか

未加盟地区でも女子は毎年、北海道(2チーム)と東北(1チーム)で交流戦を行っています。

東北(男子)は4チームありますが、仙台(2チーム)・新潟(1チーム)・岩手(1チーム)とそれぞれの県内での単独練習や大学との交流戦などして活動しています。

クラブ連盟としては、今後未加盟地区内で自発的にチーム数が増えるのを待つしかないのですが(オトナの遊び場なので自主性が大事)、加盟に向けてできることと言えば、「年に2,3回、未加盟地区とミーティングしてJLAとしての考えを伝えたり、未加盟地区の現状を聞いたり意見交換を続けること」と原さんは言います。

この意見交換会のなかで、東北(女子)のViento(ビエント)というチームから、「東日本のファンリーグ(以下、FL)へ出場できないものか」という意見が出ました。

東日本(女子)が中心となり、現在、東北(女子)が東日本FLへ出場するための動きが始まっています。

対話からアイデアが出るので、やはりミーティングを続けて行くことは大事です。

「東北(女子)が東日本(女子)FLのワンデイマッチへ出場することが実現するなら、もう『東京旅行がメインです』って言ってもらってもいいんですよね。東京へ行くついでにラクロスするくらいでいい。最初はついででいいんです。それで東京で1日ラクロスをして、刺激を受けて、東北へ戻って、やっぱりラクロスもっとしてみたいってラクロスする人が増えて、東北にチームが増えたら、それでいいなって思っています」。

原さんが見てきた九州地区(男子)

参考サイト:全国地区公式戦:クラブチームリーグ |  公益社団法人日本ラクロス協会

さて、ここからは「九州地区」がクラブ連盟に加盟するまでの話を紹介します。なぜかというと、原さんが立役者だからです。

原さんは、久留米大学(九州学生リーグ戦)を卒業した2年目の2009年に、当時、九州地区に唯一あったクラブチーム・infinity(インフィニティ ※4)に入部します。

infinityは2007年に創部したクラブチームで、九州学生リーグ戦にエキシビションで参加していました。

入部した原さんは「このまま全国大会への道がなくてよいのか」と疑問に思い始めます。

※4  infinity; 2023年クラブチームリーグ戦パンフレットからは「INFINITY LACROSSE CLUB」表記になっています。

infinity時代の写真(原さんは、最後列の右から3番目)

2012年Arditoを立ち上げた

九州地区から全国大会へ出場するためには、1チームしかない現状を打破しなければと原さんは思います。

infinityメンバーのなかに、学生時代に九州ユースで一緒だった福岡大学と西南学院大学のOBがいました(各大学で主将をしていたことも共通点)。原さんは、同期2人に新チームを作ろうと提案し、2012年に3人で新チーム・Ardito(アルディート)を立ち上げました。

「Arditoへは、いままでクラブチームに入っていなかった後輩たちを誘いました」

同年、L.C.BALSAMICOSSE(エルシーバルサミコス)というチームも九州大学OBたちにより創部されます。こうして、九州地区には3チームが存在することになりました。

Ardito時代の原さん(真ん中)

クラブ連盟加盟前夜

2012年から2015年まで、クラブ連盟加盟前のプレ大会として3チームで「九州地区クラブリーグ大会」を開催します。

2014年大会の模様(.Relaxより)

2014年クラブチームリーグ戦パンフレットから、未加盟地区紹介として九州地区3チームの名前が載るようになりました。

なお、原さんご自身、選手としては2014年(~2015年)に「Arditoにもメンバーが増えたので」ということを理由にinfinityに戻ります。

また、クラブ連盟関連では2013年から2015年まで「九州地区クラブ代表」として、九州地区のクラブ連盟加盟に尽力します。

Arditoの集合写真(原さんは、最前列左から3番目)

2016年KLC HAWKSを立ち上げる

本部長としての原さんに「クラブチーム数を増やすために何をしたらいいと思うか」と質問をしたときに、「OBチームが増えていってほしいと思っています」という答えが返ってきたのですが、既に2016年に原さんは久留米大学OBチームであるKLC HAWKS(ケーエルシーフォークス)をOBの先輩達と一緒に立ち上げていました。

「(新チーム立ち上げは)母校がよくなってほしいとい、という思いが一番強くありました。OBが母校のグラウンドで学生たちと練習して、ラクロスから離れたOBがラクロスに戻ってくる。OBが盛り上がったら、学生も盛り上がるし、OBから学生への支援も増える。支援が増えればまた母校が強くなる。母校が強くなったら、またOBが盛り上がる。OBチームができることって、いい循環しかないと思うんです」

KLC HAWKSの集合写真(原さんは、2列右から2番目)

2016年九州地区にもいよいよ全国への道が開く

同年、原さんは九州地区を中四国支部としてクラブ連盟へ加盟させます。これにより、九州地区が、第5回中四国クラブチームラクロスリーグ戦(以下、中四国リーグ戦)へ出場できるようになったのです。

「九州ブロック(4チーム)」と「中四国ブロック(3チーム)」とに分けてリーグ戦をし、両ブロックの1位同士が対戦、中四国リーグ戦の優勝を決めました。

この年の優勝(男子)は、中四国ブロックのBARBARIAN LIGHTS(バーバリアンライツ)でしたが、九州地区に全国の道が開かれました。

第5回中四国クラブチームラクロスリーグ戦(九州ブロック)開会式の模様(.Relaxより)

なお、クラブチームリーグ戦パンフレットに「中四国・九州」と「九州」の文字が表記されるようになったのは、2021年(第9回)からです。

コロナ後の中四国・九州リーグ戦

中四国・九州リーグ戦でも2021年以降は、それぞれ4チームから2チームずつとチーム数が減り、ブロックでのリーグ戦ができなくなったため、試合をするときの移動距離が大幅に伸びました。

原さんが所属するKLC HAWKSも、「母校で月一ラクロスをするのはいいけれど、リーグ戦に出るほどではない」と現在はクラブリーグ戦に出ていません。

競技人口・チーム数の減少は原さんの本部長の船出としては厳しくはありますが、本部長補佐の布施さんや副本部長といった柔軟なオトナたちとともに工夫し、「7地区開催」を実現しそうなパワーを原さんから感じました。

次回は最終回。クラブチームの「選手」であるDESAFIOの太田優さんに「東日本チャンピオンリーグ」で試合をする意味についてお話を伺います。


原健太郎さん

原健太郎さん
日本クラブ連盟本部長
【クラブチーム選手歴・クラブ連盟歴】
2008年 久留米大学卒業
2009年~2011年 infinity(九州・選手)
2012年~2013年 Ardito(九州・選手)
2013年~2015年 九州地区クラブ代表
2014年~2015年 infinity(九州・選手)
2016年~ KLC HAWKS(九州・選手)
2016年 本部スタッフ
2017年~2023年 副本部長
2024年~ 本部長

Text by 日本ラクロス協会広報部 岡村由紀子

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